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仮に一二〇歳で貰ったとして八〇歳まで管理費と修繕積しけ一金を払い続けたとすれば、その総額は、ゆうに一〇〇〇万円を超えるだろう。
一〇年に一度の人規模修繕では積立金不足で五〇万~一〇〇万円の一時金が徴収されることが多い。
その分も考慮に入れないといけない。
専有部分のリフォーム費用はどれだけ手をかけるかにもよるが、一般的には一〇〇〇万円以上と言われている。
高齢化にともなうバリアフリー対応などで今後はさらにコストがかさむとの予測もある。
このパンフレットのケースでは二一五年間のローン返済総額が約六六〇〇万円になるが、八〇歳まで生きるとなると、一億円近く、下手をするとそれ以上の支払いになるかもしれない。
仮に頗金を三分の一以上の二九〇〇万円入れて、二七〇〇万円の借り入れに抑えたとしても、二五年後の返済総額は四六〇〇万円を超える。
全額ローンに比べれば相当に安上がりだが、それでも頭金との合計では六一〇〇万円以上になる。
これに先ほどの管理費、修繕積立金、固定資産税、専有部分のリフォーム費用を加えると、総徹は九〇〇〇万円以上である。
しかもこれは、建物のつくりがしっかりしていて、入居者の総意で維持管理もきちんとなされ、三〇歳で買って八〇歳の長寿を全うするまで、建て替えの必要がないという前提の話である。
法制審議会(法相の諮問機関)が、区分所有法の改正に向けて発表した中間試案では、マンションの建て替え要件の「老朽化」を「築後三〇年以上」もしくは「築後四〇年以上」と定義している。
三〇年か囲〇年で建て替えやむなしと言われるマンションが、果たして五〇年持つのか。
マンションの建て替えは、法整備が進みつつあるとはいえ、屠住者間の意見調整が難しいため、現実には極めて国難なのが実情だ。
仮に居住者間の意見調整ができたとしても、いざ建て替えとなれば一戸当たりの負担は一〇〇〇万~二〇〇〇万円にもなる。
別途建て替え期間中の仮住まい費用も数百万円必要だ。
「そんなに入金がかかるのでは」と人規模改修(リノベーション)に切り替えたとしても、一戸当たりの負担は三〇〇万円は下らないだろう。
先の総額にこれが加わってくる。
当たり前のことだが「ローンの返済が終わっても、管理費や修繕積立金や固定資産税の支払いは続く」と但し書きがしてあればいい方である。
マンションの所有者になれば、そこに住もうが、いずれ貸そうが、売り払って所有者でなくならない限り、いつかは老朽化の問題に正面する。
建物の晶質がよく維持管理もしっかりしているマンションで、建て替えは免れたとしても、大規模補改修の費用負担は避けられないだろう。
先々の賃貸運用を考えるなら、これらのコストを考えておかないといけない。
それを避けるにはよほどいい立地によほどいい物件を買って、うまい具合に売り逃げするしかない。
維持管理のコストという点では一戸建ても似たようなものだ。
五~七年ごとの補修が欠かせないし、四〇年もすれば建て替えが待っている。
集合住宅のマンションと違って、一戸建ては文字通り「私だけの城」だから、どんなにポロになろうが、本人や家族がそれでいいなら、そのまま住み続ければいい。
しかし、いざ建て替えとなれば、解体、建築費等々で二〇〇〇万円は必要だろう。
「住宅ローンの支払いが終われば、タダの家が手に入る」などというのは、嘘っぱちもいいところなのだ。
日本の住宅寿命は恐ろしく短い。
マンションにしろ、一戸建てにしろ、住宅ローンの返済が終わって一息ついた頃には、建物が老朽化し、たいへんな出費を強いられる可能性が強いのだ。
そのことを織り込まずに「買った方がトク」の結論を導くような試算は、為にするシミユレーションと言わざるを得ない。
仮に先のパンフレットの賃貸マンション(家賃一七万五〇〇〇円)を、二年に一度、更新料一カ月分を支払い、五〇年間借り続けたとしよう。
この場合の総額は約一憶一〇〇〇万円。
今後、少子高齢化等々で家余りと地価の下落が続くことを考えれば、将来的に賃料相場が人きく上昇するとは到底思えない。
先のマンション販売のパンフレットは、実はS区Tに住む知人の賃貸マンションに放り込まれていたものなのだが、その知人によれば、「うちの家賃はこの一〇年間据え置かれたままだ」という。
「周辺の賃料相場は下がっている。
いま借りれば、もっと安いと思う」とも言っていた。
百歩譲って賃料相場が上昇するとしたら、もう少し小ぶりなマンションに引っ越してしまえばいい。
3LDKの賃貸マンションは、明らかに子育て用だから、子供が巣立ってしまえば、こんな高い家賃のマンションにいつまでも住む必要はない。
賃貸ならライフステージの変化に応じて好きなときに、好きな場所の、好きな物件に引っ越すことができる。
もっと安い2DKとか2LDKに住み替えれば、実際の家賃負担はもっと少なくてすむ。
仮に三〇~五五歳までの二五年間を3LDKの家慣二七万五〇〇〇円のマンションに住み、五六~八〇歳までの二五年間を家賃一三万五〇〇〇円の2LDKに住んだとすれば、家賃の総鶴は約九六〇〇万円ですむ。
引っ越しと住み替えにともなう費用(敷金・礼金・仲介手数料)が一〇〇万円程度かかったとしても九七〇〇万円だ。
しかもこれはS区T周辺の話であって、もっと賃料相場の低い地域であれば、生涯の家賃負担はずっと少ないのは言うまでもない。
生涯平均でこれより月額賃料が三万円安ければ、五〇年の総額では二〇〇〇万円近くも安く上がる。
つまり七七〇〇万円程度ですむ。
こうなると、「借りるより買う方がトク」などとは必ずしも言えないのではないか、という話になる。
マイホームを買う利点として、よく「老後の住まいの安心」が言われる。
「ローンを払い終えればタダで住める」と言うのが理由だが、実際には住宅ローンを払い終えた後でも、管理費、修繕積立金、固定資産税のほかに専有部分のリフォーム代は必ずかかる。
先のケースで言えば、これだけでおそらく一〇〇〇万円程度はかかるだろう。
さらには人規模改修や建て替えの費用も頭に入れておかないといけない。
大規模改修は最低でも三〇〇万円程度、建て替えは一〇〇〇万~二〇〇〇万円を覚悟する必要がある。
一戸建ては築四〇年程度で建て替えが必要になる。
その場合は二〇〇〇万円程度かかる。
住宅ローンを払い終えてもこれだけのコストがかかる。
タダどころではない。
建て替えとなったら、入金を用意しないといけない。
そのとき本人は七〇歳すぎだろう。
この費用をどうするか。
ローンを払いながらコツコツ貯めるか、そうでなければ、その時点で銀行から借りるしかない。
といって、七〇歳すぎの高齢者に銀行が大金を融資してくれるかどうか。
少子高齢化、家余り等々で今後も地価下落は確実である。
そのときマイホームにどれほどの担保価値があるかは疑問と言わざるを得ない。
おそらくマンションでは相当の世帯が資金の手当てに窮するはずだ。
五分の囲以上の賛成で建て替えできるとは言っても、それが可能かどうかは疑わしい。
それならと大規模改修にすんなり落ち着けばいいが、そこでもひと悶着あるのは間違いない。
どのみちマイホームを買えば、住宅ローンを払い終えても、大金が必要になる。
「老後の住まいの安全を買ったつもりが、実は不安がいっぱいなのである。
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